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今日のこと 
  唆店 <ID: orBpoqn4> - 2011/07/15(Fri) 20:50 No.26832
neko_ws.gif友達が一人でないていました。

それを私と友達は二人でそれをみていることしかできません。

泣いてるほうの友達はひとりで帰ってしまいました。

もう一人の友達はなにもできずに
見ていることしかできない自分を「弱い」といいました。

それをみてただ「大丈夫だろ。」
と笑うことしかできなかった。

真剣になれない怖くて、本気になれないわからなくて
方法がないからさがす。

経験値がたんないからふやす。

だからがんばろうよ
レベルアップなんてすぐできるから
次の面に早くいこう?
生き方なんて知らなくても
リセットボタンがありますから。







リセットボタン 
  唆店 <ID: orBpoqn4> - 2011/07/27(Wed) 21:49 No.26841


risu_ns.gif
リセットボタン、ゲームでよく使うボタン。

人生ゲーム、ヒトの人生を双六で表したようなボードゲーム。

まぁ、つまり私が言いたいのは

ゲームが楽しいのは現実では
できないことができて
リセットできるから気楽にできることです。  多分。

だったら、人生にもリセットボタンがあれば楽だよね

だから、探してみた、

精神年齢が10歳以下のわたしでもみつけられる


   ━人生にリセットボタンはあるんだよ?━


Re: 今日のこと 
  湖翳 <ID: dvBWABRZ> - 2011/07/30(Sat) 14:33 No.26843


risu_ns.gifそんなボタンこの世にはあっちゃいけないと思う。



絶対に。


Re: 今日のこと 
  唆店 <ID: orBpoqn4> - 2011/08/01(Mon) 18:51 No.26844


risu_ns.gifリセットボタンが必要ないって
言ってる人はすごい人です

生きてて「こんなこともうやめたい」とか
「もう、逃げ出してしまいたい」とか
思ったことがない訳はないですよね?

それでも「もし、リセットボタンがあったら・・・。」
と思わないなんて強いですね。

ホントに尊敬したいです。

わたしではムリです。

絶対、私が人生で逃げ出して無い時なんて
なかったので

だから探したんですよ

どんなに辛くても
    苦しくても
    汚れてても
    どんな風でも

使えるようなボタンを。


心傷 
  唆店 <ID: orBpoqn4> - 2011/08/07(Sun) 17:03 No.26846


neko_ws.gifこのあいだ、痛い光景をみた
痛かった。すごく。
目の前で嬉しそうに、楽しそうに振る舞っている人を見て
胸が痛んだ
その光景を楽しそうにしている人達を見て、傷が開いた
光景の理由と事情をきいて
泣いてしまった。
何故かわからないけど逃げ出したくなった。

この気持ちを例えるなら
なんらかの事故で怪我を負ってしまった
サッカー選手がいたとして
その選手に、見たくもない
サッカーの試合を見せているような感じ。

傷口がふさがってきているのを
また開かせるなんてどうゆうつもりなんだろう?

痛くて痛くて、どうしていいかわからない。

目から汗が噴き出るんだこの季節は。
暑いからじゃないのは知ってる。
止める方法も知ってる。
それでも『それ』をあふれて止まない。


心傷2 
  唆店 <ID: orBpoqn4> - 2011/08/09(Tue) 13:53 No.26847


imo_nakis.gif最終日
「いってらしゃい」
笑顔で言って送り出す
また胸のあたりが痛い
痛い痛い痛い

今日で終わりだ。
もう一生ない
だから傷、ふさがって。
痛い
今日で終わりと知っていても
明日も明後日もきっといてむ
そしてそこから
その液体は流れ、落ちる

目からまた湧き出る
痛いよ。
これ以上私の傷を開かないでほしい

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
いたいいたいいたいいたいいたい
イタイイタイイタイイタイイタイ
痛いいたいイタイ  

私・・いや、ボクは居たいよ
ここにまだ存在して流し続けないと
ボクはきっと消えてしまうよりひどいことになる

それでも痛い。なおらない
流れているのは胸からじゃない
胸をおさえても意味がないよ・・。



だって血が流れているのは心からだもん。


心傷3 
  唆店 <ID: orBpoqn4> - 2011/08/11(Thu) 14:49 No.26848


imo_nakis.gif痛くてどうしようもないから誰かに相談しようとした。
でも、相談する内容とか、順番とか、考えてたら、
もう、満足してしまった。

まぁいいんだ。
満足できれば。
少しは傷も痛くなかろう。
だからボクはまだ、平気。


Re: 今日のこと 
  朗詠 <ID: orBpoqn4> - 2011/08/15(Mon) 20:43 No.26849


neko_ns.gifサクサク読めます。
また、よろしくお願いします。


心傷4 
  唆店 <ID: orBpoqn4> - 2011/08/20(Sat) 16:33 No.26850


imo_nakis.gif 痛いところはもうなおった
そう思った時
また、傷口は開いた。

まただ、もう終わったと思ってたのに
油断していた痛い
油断していたフェイントが加算されて
倍痛い
 
また我慢しなきゃいけないんだ
いやだなぁ
そんなことを考えながら痛みに耐える

痛い痛い痛い
「痛い。」
つぶやいたところでだれも聞いてくれないけど
我慢できずにつぶやく

「痛い。」
足をバタつかせる。
「痛いよ。」
手も動かす
「痛いって。」
首をおさえつける
「痛いってば!」
頭をかかえる。
「うぅ・・・・。」
まだ泣くような時間じゃないのに泣く。
今から『その時間』がくるのに
でも幸い今日の『その時間』の時は、
イベントがある。
まだ大丈夫だ。
もがいていられる。
だから耐える、この痛みに
もうすぐくるイベントを楽しむために
ボタンには手なんてのばさない。


   マダ、ココデ、ソンザイデキル・・・−


感情・感傷 
  唆店 <ID: orBpoqn4> - 2011/08/29(Mon) 16:44 No.26855


imo_nakis.gif
自分のことは、自分でよくわかってるつもりだった。
でも・・。
わかってなかった。
むしろ他人の方がわかってくれていた・・。

「表情が足りないよねww」
 肉親から言われたその一言。
彼女からみればただなんとなくいったことに過ぎないんだろう

わかってる。
 わかってるよ。
  知ってるもの。

ただ偶然言い当てられただけだ。

 なのに

「そうだね」
そう答えた。
そしたら、思い出してしまったんだ・・。
小さい頃のこと、 
大嫌いな過去のことー・・。

今でも【そのこと】は私の頭にこびりつくようにして残ってる
その写真を見るたび思い出すんだ。
      
     思い出したい訳でもないのに
忘れたいわけじゃないよ 知られたくない訳でも・・ない。

でも思い出すたび私は泣くんだ一人で、
そして、また一つページが増えてくんだ
         《日記》のページが。

増えていくたび、増やさないといけないんだ。
また埋めないと・・。
うめなくちゃ・・。
ウメないと・・・・・。

  駄目だ、まただ
「もうやだ。」

「その時間がくるとたえられないんだ。」
「うん」
「一人で泣くんだ」
「うん」
「繰り返すんだ」
「うん」
「バカみたい」
「うん」
「なんで、なんのためにここにいるの?」
「・・・・。」
「聞いてんの?」
「違うよね」
「?・・・はぁ。」
「だから、訊きたいことが違うでしょ?」
「・・合ってるよ。」
「・・・・。」
「答えてよ」

      続けるかも・・。


Re: 今日のこと 
  ひかる <ID: EbUeqZMZ> - 2015/06/10(Wed) 00:35 No.27196


neko_ns.gif何故か、胸に来る話です


破壊嬢と嘘吐き騎士 
  連華 <ID: ChncdPun> - 2010/10/23(Sat) 18:35 No.26794
imo_holes.gifどうも、剣道に挫折した連華です。
もう二度と連載とかやりません。ハイ。
例のごとく何の脈絡もない短編集に走りますので、十分ご覚悟あれ。
次レスより始まりますー。


(更新不定期だったり支離滅裂だったりしても気にしないでね。てへっ)


Re: 破壊嬢と嘘吐き騎士 
  連華 <ID: ChncdPun> - 2010/10/23(Sat) 19:12 No.26795


imo_holes.gif*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

「ひめー!目線だけこっちー!」
「姫じゃねェどっちかっつーと俺は王子だああああ!!」

満面の笑みで千切れんばかりに手を振る阿呆───もとい、写真バカこと春【シュン】。
ブチ切れた俺を笑っていなし、ぱしゃりとシャッターを切る。
また勝手に、とちいさく溜息をつく。
へらりと笑ってみせた春の首を、ぎゅうぎゅうと締め上げてやる。

「どうどうどうどう、落ち着いてェはいスマイルスマイルぅっ」
「テメェの墓に衝撃スマイル捧げてやるから安心しろ」
「まじですかー!」

きらきらと目を輝かせる春を見ているうちに、なんだか馬鹿馬鹿しくなってきた。
何を言っているのだ、コイツは。
首絞められてんのに。死にかけてんのに。
変なヤツ。
小さく笑みを漏らした俺を、ぽかんと阿呆面の春が見る。

「…なっつんー?」
「なっつんって呼ぶな恥ずかしい」
「きゃああかわいいその顔いただき!」
「ちょ、そんな至近距離で撮ったらフラッシュが殺人兵器に───」
「ごちそうさまでしたぁー」

ちらりと口端から舌を覗かせ、ぱん、と拝むような格好をしてみせる。
…畜生、ちょっとかわいい。
腹が立ったから、綺麗に整った春の髪をぐしゃぐしゃとかき回してやる。
出逢ってからずっと変わらない、この指通りの良さ。
春はじたばたと暴れるが、10センチ以上はある身長差のせいでほとんど抵抗になっていない。

「うにー!なっつんのドアホー!氷漬けにしてやるー!蝋人形にしてやるー!」
「ドアホとか偏差値ピーーーのヤツに言われたくねえ」
「偏差値で人間の価値が計れるかァ人間中身より外見だー!」
「……うん、そろそろ黙ろうか支離滅裂ガール」

ぴたりと春の動きが止まる。
何を、と思ったときにはもう遅く、ぱしゃりとシャッターを切る音が耳朶を叩いた。
ふふふー、と怪しく笑いながら、春は俺を見上げてくる。
…いっそ、このまま殺してやろうか。

「いやぁー、やっぱりなっつんの怒り顔は最高ですなぁー。ふふふふふー」
「キメーぞ脳内クラッシュガール」
「光栄ですなぁー」

………俺の力だけではこのバカは救えそうに無い。
がっくりとうなだれた顔を、下から覗き込むようにぱしゃりとやる。
…もう面倒臭くなってきた。

「なっつんー」
「ん?」
「……、笑って?」

ひとつ溜息をついて、諦めたようにすこしだけ笑ってみせる。
無骨なデザインのカメラの向こうから、春が笑ったのが見えた。
相変わらず似合わねえな、と胸の内で呟く。

「ふぉー。大収穫ー」
「そりゃ良かったな」
「うんっ。フォトコン出してみるっ」

目指せグランプリー!とカメラを突き上げる。
春との付き合いは長くなるが、そんな良いとこまで行った試しなんてない。
人物を取りはじめたのはごく最近で、その前はずっと風景を撮っていた。
小柄な身体に似合わないでっかいカメラを持って、必死に空を見上げていた。

『 そんなに背伸びするなよ 』

その言葉をきっかけに、春はぱったりと風景を撮ることをやめた。
ただベランダで無謀にも爪先立ちになる春を心配して言ったのだが、俺の真意は伝わらなかったらしい。
昔からコイツは、とことん思い込みの激しいヤツだ。
ぽん、と小石が春の爪先に蹴られた。

「なっつん、あたし決めたよ」
「うん?」
「なっつんの──夏人の、専属キャメラマンになる!」
「‥覚悟しておいてやんよ」
「……!うんっ!」

嬉しそうに目を細めて、春は眩しそうに笑った。
何が楽しいのか、愛カメラをぽんぽんと叩いている。

お前の撮る空、好きだったよ。
うん、でももう撮らないよ。
なんでだよ。
…なっつんの方が綺麗だから。

そんなくだらない会話が、ぽつりぽつりと交わされる。
ファインダーを通さない春の瞳は、彼女の撮る写真のように綺麗だった。
静かで、少しだけさみしくて、あたたかなそれ。
きっと誰かが彼女を被写体に選べば、きっと簡単に入賞してしまうだろうと思う。
その誰かが俺でありたいと思うのは、あまりにも傲慢だろうか。

(被写体はひとりだけ)


Re: 破壊嬢と嘘吐き騎士 
  連華 <ID: ChncdPun> - 2010/10/30(Sat) 11:30 No.26796


imo_holes.gifFROM:奏先輩
件名:先輩命令☆

これ見たら至急返信ください
                        奏

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

FROM:かなた
件名:Re:先輩命令☆

イヤです☆ミ

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

FROM:奏先輩
件名:Re:先輩命令☆

(しねばよいのに)
あああの流れ星はきっとお前の命運が尽きたことを知らせているんだな

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

FROM:かなた
件名:Re:先輩命令☆

(本音!建前!)
いや、あたしにしか見えないところからしてあれは先輩のです
多分。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

FROM:奏先輩
件名:Re:先輩命令☆

お前もな!
ってそんなことはどうだっていい、まあ聞け。正座しろ。俺の前に跪け。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

FROM:かなた
件名:Re:先輩命令☆

>
>イヤです☆ミ

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

FROM:奏先輩
件名:Re:先輩命令☆

送信メールからまるまる引用すんな!「>」でバレてるから〓

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

FROM:かなた
件名:Re:先輩命令☆

はいはい機種依存機種依存
灰になれこのたわけめが!

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

FROM:奏先輩
件名:Re:先輩命令☆

ちっ…これだからあーゆーユーザーは…

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

FROM:かなた
件名:Re:先輩命令☆

あーゆーと全世界のあーゆーユーザーの皆様にジャンピング土下座100億回。
ハイいちにいさんしー、

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

FROM:奏先輩
件名:Re:先輩命令☆

カウント早!

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

FROM:かなた
件名:Re:先輩命令☆

うふふふふふふふふふふふふふふふふ。

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

FROM:奏先輩
件名:Re:先輩命令☆

やべなんか泣けてきた…
まあいい、今から電話かけるから正座して待っとけ
【 先 輩 命 令 】

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

FROM:かなた
件名:Re:先輩命令☆

へいへいほー

+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

+++

『お前は与作か!』
「そーなんですよ、こんなところでスチューデントなんかやってる女じゃないんですあたしは」
『ハイハイ黙れ妄想族』
「れっつごーとぅー………………旅!」
『トリップでもトラベルでもいいから覚えような…』
「きゃー先輩トリップとか響きがえろいー」
『お前の脳内の方がいやらしいわこの中二病!』

「で、電話代もったいないから訊くけどなんすか」
『…お前のせいだから。俺の料金も払えコラ』
「まーじーでーかー」
『いいか、1回しか言わねーぞ』
「あ、やっぱ3秒だけ待って」

ツーツーツー………

「もっしんぐ」
『…何があった』
「‥実はあっし、凄腕のスナイパーに狙われておりやして」
『いや既に突っ込みどころはそこじゃな───…ま、いっか』

『かなた、


ツーツーツーツーツーツー


『「………このタイミングで充電切れとかあぁぁぁぁぁぁ!!!」』

(恨むべし、電子恋愛)


Re: 破壊嬢と嘘吐き騎士 
  連華 <ID: ChncdPun> - 2010/11/07(Sun) 17:48 No.26797


imo_holes.gif             【 混ぜるなキケン 】


「…なにこれ?」

ちんまりとした我が家の真ん中に陣取る、おそろしく場違いなドでかいテーブル。
その真ん中、つまり我が家の真ん中に、ソレはあった。
見たところ、よく理科室なんかにある瓶詰めの薬品っぽいナニカ。
そして判りやすい、黒のバックに赤のインクでおどろおどろしくドクロマークが描かれている。
…小学生か。

「ったく…誰だよこんなん置いてったの…っん、」

溜息とともにソレを手に取るが、予想以上にずしりと重い。
ふと、サークルのメンバーのニヤけた顔が脳裏をかすめる。
……アイツらか。
散々人の家でどんちゃん騒ぎしていった挙句のコレか。
…畜生、やっぱりあのサークルやめよう。

「…何?レニウムまたはアスタチンと混ぜると非常に危険です…ってそんなもんウチにあるかぁ!!」

がこっ、と勢い良く叩いたビンのふたが鈍い音を立てる。
…そーいうツッコミを期待してたのか?そうなのか?
……畜生、地味に痛ぇ…。

ひた。

「…ん?」

ひたひた。

「………え、」

ぴとっ。


「い゛や゛ぁぁぁぁぁ──────ッ!!」


+++

「センパイ、やっぱりあれイツキには刺激的すぎたんじゃないスかね」
「いや、フジユキにはあれくらい教えておかないと……ね♪」
「何スかその間は!あぁ可哀想なイツキ…」

(とある恵まれない大学生のはなし)


Re: 破壊嬢と嘘吐き騎士 
  連華 <ID: ChncdPun> - 2010/11/19(Fri) 07:33 No.26801


imo_holes.gif「お早う。…どうしたの?」
(キミのせいだよ)
「…そう。よく頑張ったね」
(キミのせいだよ)
「うん、判ってる。だけどもう、」
(キミのせいだよ)
「…そうか。そうだね。うん」
(キミのせいだよ)
「大丈夫だよ。俺は何処にも行かない。ずっとずっと……君の傍にいるよ」
(キミのせいだよ)
「…うん。‥‥あいしてる、」

+++

(たすけて、)
「何を言っているの?君は俺のモノだよ」
(たすけて、)
「そうか、怖いんだね。大丈夫だよ」
(たすけて、)
「君は知ってる?何故人は助けを求めるのか」
(たすけて、)
「それはね、」
(たすけて、)(たすけて、)(たすけて、)
「死ぬためさ」

+++

(  )
「どうしたの?もう何も言えなくなったの?」
(  )
「残念だなぁ…君には期待していたのに」
(  )
「こんなに早く逝ってしまうなんて思わなかったよ」
(  )
「君なら俺を判ってくれると思ったんだけどな」
(  )
「ほら、何か喋ってごらんよ」
(  )(  )(  )
「捨てないでいてあげるからさ」
(  )(  )(  )(  )(  )
「…残念だけど、さよならだね」
(  )(  )(  )(  )(  )(  )(  )
「 バ イ バ イ 」

+++

「ったく、最近の若い奴らの考えることなんざ判らねーっての」
「全くッス。俺らの代でもこんなイカレた事件なんて無かったッスよ」
「伊田刑事!こちらであります!」
「へいへいっと…じゃあ俺ァもう行くぜ」
「はっ!お疲れ様ッス!」

「自分が殺した少女の遺体に話しかける少年……ねえ」
「 腐ってやがる。 」

(君の声は俺だけに響けばそれで良い)


Re: 破壊嬢と嘘吐き騎士 
  連華 <ID: ChncdPun> - 2010/11/28(Sun) 00:46 No.26802


imo_holes.gif「ねえせんせい」
「はい?」
「せんせいはさ、何処へいくの?」
「…そう、ですね‥‥ユキは?」
「おれ?」
「はい」
「うーんと………あっ、あそこ!あのー…、なんだっけ」
「じゃあ、私もそこです」
「えー、なんかずるい」
「そうでしょうか?」
「そうだよ」
「‥‥そう、かもしれませんね」

────────覚醒。

+++

こうしてため息をつくこと、諦めること、そうして、オトナっぽくなること。
知りたくなんて無かった。それでも知ってしまった。
オトナになれず、必死にオトナのフリをした。
それを、偉そうな大人たちや大人たちの作った教科書は反抗期だといった。
ハンコウキ。変な言葉だ。
へんてこりんで単純で、つまらない言葉だ。
一体誰がそんな言葉をつくったんだろう。
きっとどっかの偉い偉いバカな大人なんだろう。

「だからこうやって……さー───」

手を伸ばすんだ、君が消えないように。
ちいさな手の隙間から覗いた、セカイが消えないように。
そっと、願うんだ。
今日みたいに当たり前で、退屈な明日がありますように。

+++

「ユキは、嘘が好きですか?」
「へ?なんで?」
「いえ、訊いてみただけですが」
「うーん…そうだなぁ…すき、じゃないよ。でも、きらいじゃない」
「それはどうして?」
「だっておれ、いつも嘘ついてるもん。好きとか嫌いとか…考える暇もないんだ」
「…哀しい、ですか?」
「かなしくなんかないよ。でも、ちょっとだけさみしい……かな」
「さみしい?」
「うん。なんか、こころがいたくなる」
「心……ですか」

────────ソレは、なんだった?

+++

網膜を鋭く染める黒い髪が、ざわり、とおれの心を揺るがす。
なんだよ、アイツ。
どうせ、オトナぶってるだけのくせに。
なにもしらないくせに。しあわせなくせに。
どうして、そんな風にやさしく笑うんだよ。
愛されたくなるだろう。

+++

「…せんせい、すき、ってなに?」
「‥‥難しい質問ですね」
「うん。だからせんせいなら判るかと思ったんだ」
「ユキは、何だと思いますか?」
「…判らない。けど、そんなに良いモノじゃないみたい」
「どうして?」
「…おれがアイツのことを……すき、だったなら、こんな変な気持ちにならなかった。痛くもさみしくもなかった」
「でも、それは大切な気持ちなのでしょう?」
「…判らない。でも、傍にアイツがいないのは……嫌なんだ」
「知りたくなかった?」
「そうかもしれない。…でも、後悔はしてないよ」

────────そうして手に入れたモノは、本当に求めたモノだった?

+++

偉くなったフリ。強くなったフリ。優しいフリ。
優しく笑ってみたら、優しくなれた気がした。
でも、本当のおれは空っぽのまま。
空っぽのまま笑ってみたら、さみしくなった。
おれを満たせるのは、アイツだけなんだ。

つまらなくて、目立たなくて、空気みたいみたいなアイツ。
それでも、俺はアイツがいなきゃ生きることさえできないんだ。
ほらまた吸って吐いて、今を生きている。
アイツの生命と一緒に、生きている。

+++

「つらいよ…せんせい、すごくつらい」
「どうして?想う人を見付けたのでしょう?」
「確かにおれはアイツが好きだよ、でもアイツはおれのことなんて知りもしないんだ」
「それで、諦めてしまうのですか?」
「諦めたくなんてないよ。でも諦めなきゃいけないんだ」
「…それは、哀しいことですね」
「さみしいしかなしいけど…どうしようもないみたい」

────────そうして、オトナになった。

+++

どうして、こんな風になってしまったのだろう。
何処で道を誤ったのだろう。
答えは見付からぬまま、こうして彷徨っている。
果ての見えない心の中、独りきり。
どうして君はいないのだろう。
どうしてアイツは消えてしまったのだろう。
ひとつきりの目印だったのに。

馬鹿野郎。
なんで、おれをひとりぼっちにするんだよ。
愛してくれよ、馬鹿野郎。

+++

「せんせいは、どうしてこんなおれの話を聴いてくれるの?」
「‥ユキのことが好きだからですよ」
「どうして?どうしておれなの?」
「さあ…何故でしょうか。でも」
「でも?」
「ユキの言葉は眩しすぎて。私の汚さだけが目に沁みます」
「せんせいは汚くなんてないよ、綺麗だよ」
「…ありがとう。でも私はオトナですから、汚くて当然なのかもしれません」
「でもおれは、そんなせんせいが好きだよ」
「‥‥ありがとう。私もユキが好きですよ」
「おんなじだね」
「…はい」

(平行線、それは交わらない愛のカタチ)


Re: 破壊嬢と嘘吐き騎士 
  連華 <ID: ChncdPun> - 2010/12/21(Tue) 18:08 No.26805


imo_holes.gif「─────あ゛ぁぁぁ───ッ!!!」
「デルフォイの信託!…って何言わせんねんもう期末終わったのに!」
「ユウ、もうあんたでいい付き合え!」
「え、ちょ、俺の自由意志は──」

そうして引きずり回されること数十分。
学校の周りを全速力で何十周もした挙句、ようやくチハヤが落ち着いたのはそれから更に一時間ちょい後のことだった。
…俺の1時間と数十分を返せ。

「…今度は何したん彼氏。浮気?夜逃げ?それともストーカー?」
「もうあんなん彼氏じゃねェ畜生だ!」
「はいはい、んで?」
「畜生の分際でこのチハヤ様に夜通しメール送りつけてきやがったんだよ!どう思うこーいう男?」
「ダルいやっちゃなぁ…それで朝から機嫌悪かったんか」
「おうよ!腹立つからケーキ3年分おごらせてやろーか!」
「だぁから俺、そんな頭悪そな男やめときぃ言うたやろー。アホやなぁ」

ぽんぽんとチハヤの頭を撫でてやると、怒り狂っていたチハヤの表情が少しだけ和らいだ。
昔からチハヤはこうなのだ。綺麗でかわいくてモテるくせに、選ぶのはろくでもない男ばかり。
特に恋愛に関しては不器用なのだ。
くしゃり、と虚勢がはがれてさみしそうな素の心が覗く。
…本当は、こういうのは彼氏の役目じゃないのだろうか。

「…チハヤ。本当に好きじゃないんなら、やめとき?そんなん、チハヤが傷付くだけやろ」
「ん‥‥‥」
「分かったん?」
「分かった…」
「それでええねん。ほら、こっち来ぃな」

するりと手を伸ばすと、大人しくチハヤは俺の腕に収まった。
そっと背中を撫でてやると、きゅっとチハヤの手が制服の胸を掴んだ。
チハヤは誰に対しても優しすぎるのだ。だから、傷付かなくても良いところで傷付いて、こうして疲れてしまう。
こうして全てを吐き出せるようになるまで、随分と時間がかかった。
触れたら壊れてしまうような、あまりに繊細なガラスのような彼女。
護る、なんてそんなたいしたことはできないけれど。
こうして触れることで、彼女が泣けるようになるのなら。
俺は喜んで彼女の礎となろう。

「もうちっと適当に生きぃな。こんなに頑張らんでもええんよ」
「…べつに、頑張ってない…」
「ほらそうやってすぐ強がる。此処におるんはチハヤだけやないんよ?ほら、」

ほら、ちゃんと此処、俺がいるやろ?
心の在り処、ひとつあたたかいところ。指差して微笑む。
ほろりと目尻から零れた弱さを一瞬だけ見逃した、フリ。

「…なあチハヤ、」
「ん…?」
「いや、…泣き顔もかわええなぁって思うて」
「…ばか」
「あ、笑ったほうがかわええ。きゅんとした俺」
「嘘、男が胸キュンとかきめえ」

(嘘なんかつかへんよ、いっとうにお前が好きや)


Re: 破壊嬢と嘘吐き騎士 
  未斗 <ID: krjRHpxW> - 2010/12/21(Tue) 20:29 No.26806


inu_ns.gif

ここここここんばんわわわ!
お久しぶりです、お久しぶりです
覚えてるかな、ドキドキ。
 
やっと勇気を振り絞ってコメントしてみました。
更新頑張ってくださいね\(^^)/
応援しておりまする!! ではではー。


Re: 破壊嬢と嘘吐き騎士 
  連華 <ID: ChncdPun> - 2011/01/04(Tue) 16:22 No.26814


imo_holes.gifRe:未斗さん

ぎゃぁぁ今更でごめんなさいお久しぶりです!
覚えてますともえぇ!こちらこそ覚えて頂いて光栄です(*´艸`)
それでは、お互い頑張りましょう(・∀・)ノ


Re: 破壊嬢と嘘吐き騎士 
  連華 <ID: ChncdPun> - 2011/01/04(Tue) 18:40 No.26815


imo_holes.gif「ゆうやーけこやけーの」
「糸とーんーぼー」
「捕まえーた途端にーポッキリー……っておい」
「ポッキリはミュウたんの心でしたか。ありゃ」
「黙れネト充が」

夏尾アオイ、特技は他人の独り言に入り込み、脳内をクラッシュすることです。ちなみに漢です。
こんな友人を持った俺を、他人は幸せだと言う。
だがそれは、この阿呆グセを知らないバカ共だから言えることであって。

「お?その顔は…今日のお昼は素うどんですねぇ」
「…な、何故それを…!?」
「ミュウたんのお財布情勢を考えると、そこらが妥当かと♪」
「…もう二度とてめーに昼飯つくらねーから。一人で生きてゆけ」
「無理っ♪サファリパークっ!」
「お前が無理だもう帰れえええ!」

そう、コイツは皮肉にも俺のルームメイトというやつなのだ。
寮生活をせざるを得ないことは受験の時から分かっていたが、まさかこんなブッ飛んだ野郎とだとは…。
…うん、泣きたい。

「ミュウたーん、お腹へったぁ」
「ミュウたんじゃねえ!よってお前昼飯抜きな」
「ミオウたんって呼びづらいぉ…」
「苗字で呼べ苗字で!朱雀という素敵な苗字があるだろうが!」
「だが断るっ!」
「グハァ」

華麗に決まるアッパーカット。誰か終わりのゴングを鳴らせェェ俺のHPは既にゼロだ!
…なんだこのノリ。まるで俺までブッ飛んでるみたいじゃないか。
冗談じゃない、俺は清廉潔白な大学生…のはず。きっと。

「素うどんはまだかー!」
「騒ぐなお隣さんに迷惑だろうがぁ!」
「むしゃくしゃしてやった。反省はしていない」
「人間としてそれはどうかと思う!」

こんな非日常気味の日常が続くと思っていた。
そう、『あの日』までは…。

「今日からお世話になります、夏尾ミライですっ。きゅぴーん!」
「俺の弟ね、よろすく」
「よろしくしねェェ!兄弟そろって地元に帰れぇ!」

そう…本当の悪夢は、ここからだったのだ…。

(俺の心の平安を返せェェ)


◆ ともしび 
  りんご <ID: C28kC9HZ> - 2011/08/25(Thu) 20:31 No.26852
imo_holes.gif ゆらり、ゆらり、と光る

       その灯りに触れたくて――…

◆ ともしび


 ふと気がつくと見知らぬ場所にいた。
部屋とも呼べぬ、なんと言うか、そう、空間。
そんな言葉がよく似合う、そんな場所にいた。
しかしそこは何もない訳ではなく、一面蝋燭だらけだった。
どこまで続いているのか、どこで終わるのか、さっぱり判らない。
ただ足元にびっしりと蝋燭があり、火が揺れ動いている。
太いもの、細いもの、力強く燃えているもの、今にも消えそうなもの。
それぞれの蝋燭が、規則正しく並び、どこまでもどこまでも続いていた。
遠くの方がかすんで見えないが、きっと、ずっと奥まで続いているのだろう。
そして向こうに行ったら永遠に帰れなくなるような、そんな気がして背筋がぞっとした。

「こんにちは」

 ふわっ、とどこからか声が聞こえた。驚いて振り返る。
そこには白いワンピースを着た、髪の長い女の子が微笑み、佇んでいた。
私は唖然としてその子を見つめる。ただでさえ状況が飲み込めずにいるのに、
そこに見知らぬ少女が現れたのだ。しかも雪のように白いその子はまるで、まるで―――…

「ゆ、幽霊…?」

 私のその言葉に彼女はクスッと笑い、そしてふわりとした優しい微笑みを湛えて私に言った。

「私は違う。でも、あなたはそうかもしれない。」
「え?私が……?」
「そう、あなたが。」

 私が、幽霊?という事はここはあの世?え?どういう事?
いまいち状況が理解できず、私は戸惑う。そして彼女は続けた。

「あなたは、自分に、殺された。」

 今までのふわりとしたイメージからは似つかわしくない、
グサリ、と刺すようなその言葉を、淡々と彼女は言った。
私は一瞬、窒息したように息が出来なくなり、思考も停止する。
暫くしてその言葉の意味を理解する。
 殺さ、れ、た…。自分に、殺された。つまり、自殺?
私が?いやいや…あれ?でも、この、胸の痛みは…何?
 私は、はっと気がつく。胸に手を当てる。音が、ない。
心臓の音がしない。ドクドクドクと波打つ音が、ない。
私は確かに死んでいる。でも、どうして?
そうだ、私が自分で命を捨てたからだ。そうだ、そうなのだ。
自分で自分に、ナイフを――――…。

「思い出した?」
「……ええ。」

 彼女はクスリと笑う。しかしそれはばかにした笑いではなく、
何故だろう、憐れんだような目をしていて、どこか悲しそうで、
そう、私の胸にふわりふわり、と温かいものが注がれていく。
動かないのに、動いていないのに、動いているように感じる、
心臓がどくん、どくん、と。動くはずもないのに。
頬に何か温かいものが伝うのを感じた。泣いているの?
何が悲しくて泣くの?私は、もう、生きてはいないのに――。

「私が死んでいるのなら、ここは、どこ――…?」
「さあ、どこかは、私も判らない。」

 彼女は私の頬にそっと手で触れ、涙を拭うと、少し悲しそうに笑った。

「でも、ここは人の命がある場所。」

 私は彼女の目をじっと見つめる。彼女は微笑んだままだ。
私は言葉が出てこなくて、何も言えず、俯いた。
すると、彼女は小さく呟いた。

「あなたが投げ出した命は、あれ。」
「え……?」

 顔をあげると、彼女は一つの蝋燭を指さしていた。
それは白く、細い蝋燭だった。火は点いていない。
芯の部分は、黒く焦げていて。煙が立ち上っている。
まるで、たった今、消えたかのような―――…。

「あなたは、誰なの?」
「私は、ここの、番人みたいなものよ。」
「番人?」
「そう、番人。蝋燭を見守り、消えた蝋燭は片づける。」

 その言葉を聞いて、私はズキン、と胸が痛むのが判った。
彼女は私をじっと見つめる。私はその目から逃げたくて、
自分の蝋燭に視線を移した。火を失った蝋燭は、役目を終えて、
どこか悲しそうで、そして私を怨んでいるような、そんな気がした。

「たまにね」

 彼女は静かに言う。私は黙ってそれを聞く。

「あなたのように、自分で火を消した人が、ここに来るの。」

 その言葉を聞いて、胸が痛む。動かない胸が。
そして同時に気付く事があった。私は恐る恐ると彼女に聞く。

「あなたも、自分で、消したの?」
「私には、最初から、蝋燭を与えてもらえなかった。」
「え……?」

 彼女の寂しそうな目はどこを見ているのか、ずっとずっと遠くを見ているような、
そうして悲しそうに、言葉を紡ぐ。

「私は、母親のお腹の中で、無くなった。」
「それでも、蝋燭は、あるでしょう?」
「ないの、探しても、探しても、ないの。」

 彼女の目から涙がこぼれる。悲しそうに、苦しそうに、切なそうに。
ずっと遠くを見つめて、何を考えているのだろうか。

「ずっとずっと探しているのに、ないの。」

 私は何を言っていいのか判らなくて、黙っていた。
そして彼女は私に恐れていた言葉を放つ。

「でもあなたは、自分で消した。持っていたのに、与えられたのに、どうして?」

 私の心臓がグリグリと抉られたような痛みを訴える。
もう、ナイフなどないのに、痛みなど感じる体もないのに、
何故、何故、何故―――――…。
 すると彼女は突然泣くのを止め、一本の蝋燭に近寄る。
その蝋燭は今にも消えそうに、チラチラ、と燃えている。
彼女はその蝋燭を両手でまるで風から守るように包む。
一度はまた元通りになった火だが、直ぐに尽きたように、
ふっと消えてしまった。そしてもう二度と戻ることない。
 彼女は無表情でその蝋燭を見つめていた。
その表情からは彼女が何を考えているのか読み取ることが出来ずに、
私は何も言えず、ただ立ち尽くしていた。

「また、守れなかった。」

 暫くして彼女はぽつり、と呟いた。
苦しそうに、呻くように、心の底から言っているような。

「私はまた一つ、失った。」

 そう言うと彼女はその蝋燭を手に取り、
片手で上に差し上げた。すると蝋燭は魔法のように、
ふわっと消えた。まるで、成仏したかのように。

「あなたをここに呼んだのは私。」
「え?」
「あなたの火は、まだ、完全には消えてないの。」

 もう一度彼女が指さした蝋燭を見ると、
再びチラチラ、と弱い火が揺らめいていた。

「あなたに、無駄にしないで、と言いたかった。」

 彼女は今度は私の目をじっと見つめて、力強い口調で、
私を諭すように言葉を紡いでいく。

「今までも沢山の蝋燭が消えるのを見てきた。
 あなたのように自ら消す人も、多いわ。
 私はね、火が消えてくのを見て、とても悲しくなる。
 そして、とても苦しむの。
 それと同時に、私には与えられなかったのに、
 ってとても羨ましく、そして恨めしくなるのよ。
 それは私はエゴだけど、でも、悲しいのは本当。
 だからね、あなたが自分で火を消すことで、
 悲しむ人もいること知っておいてほしかったの。
 それだけ、あなたに伝えたかった。」

 彼女の言葉が心へと、直接響いてくる。
温かさと共に、切なさが、苦しさが、そして、後悔が、
私の心に静かに押し寄せてくる。痛い、痛い、痛い。
 どうして、あんな事をしてしまったのか。
後悔しても遅いのに、涙が次から次へと流れて、止まらなかった。

「私が、守るから。」
「え…?」
「あなたは帰りなさい。」

 そう言うと彼女は私の蝋燭の前まで行き、しゃがみ込むと、
大事そうにその火を両手で包んだ。すると、安心したかのように、
ゆっくり、ゆっくり、と大きな火になる。
完全な火になる頃にはもう、私の姿は霞んでいた。
それを見た彼女は、私の方を向くと、にこり、と微笑んだ。

「もう、逃げ出さないで。」
「……うん、ありがとう。」

 その言葉に満足したのか、彼女は頷いた。
その瞬間、私の姿はその場から消えた。

「―――――――……め…い…」

 深い眠りにいるような感覚、そして、誰かが何かを叫んでいる。
何を?め、い、芽衣…私の、名前―――…?
でも、誰が…?頭がぼんやりとしている。

「芽衣…っ!芽衣!」

 その声にはっとして、ゆっくりと目を開く。
視界がぼんやりとしていて、よく判らない。
ここは、どこ――――…?

「芽衣!」

 泣き叫ぶようなその声の方を見ると、
霞むの視界の中、母親が顔をぐしゃぐしゃにして、
私の事を揺さぶっていた。

「気がついたの?」

 やっと状況を飲み込む。そうか、ここは病院。
そして、私は、生き延びたのだ…。

「おか…さん…」
「芽衣!」
「おかあ、さん、ごめんな、さい。」
「芽衣…!本当にもう、ばかな子。本当に生きててよかった。」
「ごめんなさい、もう、絶対にしません。」

 お母さんは嬉しそうに泣きながら笑い、私の頭を撫でる。
よく見ると、お父さんが安心したような顔で、お母さんを支えていた。

「お父さんも、ごめんなさい…」

 お父さんは何も言わず、ふっと笑うと、頷いた。
私はそれで安心して、もう一度ふっと心地よい眠りについた。
 夢の中で、あの白いワンピースの子が、嬉しそうに私を見ていた。
そして、手には一本の蝋燭を。
 そうか…見つかったんだね……。
その蝋燭には、燃え盛るように、火が灯してあった。
彼女に手を伸ばした瞬間、彼女はふっと消えてしまった。

end.


あとがき 
  りんご <ID: C28kC9HZ> - 2011/08/25(Thu) 21:11 No.26853


imo_holes.gif
長い、長すぎる…予想以上に長すぎる。
あ、こんばんは、初めまして。
以前よくここで書いていた者です。
結構昔の話なので、知らない人しかいないでしょうけど、
知っている人がいたら感動ですね(笑)
なんか、「蝋燭」って言葉を使いたかった←
っていうか蝋燭だらけの空間、って言うのが
最初に浮かんできて…はい、それだけです←
伝えたいことは話の中に沢山詰め込んだので、
説明する必要もないかと。伝われば光栄です。

背景描写とかへたくそだし、長くて読みにくいけど、
最後まで読んで下さった方に、
心からありがとうございました。


Re: ◆ ともしび 
  March <ID: dvBWABRZ> - 2011/08/28(Sun) 09:38 No.26854


inu_ns.gifお久です。「キララ」です。
覚えてますか?

読みやすいです。
心が温まるお話でした。

・・・なんか上から目線ですいません。


Re: ◆ ともしび 
  りんご <ID: C28kC9HZ> - 2011/08/30(Tue) 17:22 No.26857


imo_holes.gif
Marchさん≫

えーと、すみません…
自分で言っておきながら、
自分が覚えてないという←
お久しぶりなのでしょうか?
お久しぶりです←

読みやすいですか?嬉しいです!
そういう話にしたかったので、
伝わってよかったです!
ありがとうございます。

いえいえ、とんでもない!
嬉しかったですよ!

コメントどうもありがとうございました。


泡沫に散る 
  未斗 <ID: krjRHpxW> - 2010/07/10(Sat) 21:37 No.26755
inu_ns.gif 
 
 
手を伸ばせば届いたのだろうか。
君の隣へ、辿りつけただろうか。
 
 
さよならなんて言えなくて
そんな哀しい言葉を
口に出す事なんてできなくて。
 
はらりはらり、風に吹かれて
泡沫に散る、僕は何時も独り。
 

 
                     2010/07/10


Re: 泡沫に散る 
  未斗 <ID: krjRHpxW> - 2010/07/19(Mon) 11:44 No.26763


inu_ns.gif

お久しぶりです!
覚えている方は多分いないと思いますが、
依然ここに生息していた未斗(みと)です。
なんやかんやで復活?を遂げましたっ
 
久しぶりに長編です。
なんかグダグダ必至ですが、それでも読んで頂ければ
未斗は嬉しいです\(^^)/
それでは〜
 


Re: 泡沫に散る 
  火凛 <ID: lzU7ncnl> - 2010/07/19(Mon) 22:43 No.26764


tora_ns.gif聞き覚えのある名前っっっ!

元パピポだけど、覚えてるかぃ??


Re: 泡沫に散る 
  未斗 <ID: krjRHpxW> - 2010/07/19(Mon) 22:49 No.26765


inu_ns.gif 
>パピポ
 
久しぶり\(^^)/
めっちゃ覚えてるよ!!


Re: 泡沫に散る 
  未斗 <ID: krjRHpxW> - 2010/07/19(Mon) 23:03 No.26767


inu_ns.gif 

*堕ちる、雨
 叩きつけられて、消えて逝く.
 
___
 

  
「古瀬要」
「……」
「古瀬っ」
「え、あ。はい」
 
 

担任の声が聞こえて、意識が現実へと戻る。
はっとなって教壇を見れば、解答用紙なる物を手に持った担任と俺を見つめるクラスメイトの視線。
窓に叩きつけられる水の音に紛れて良く聞こえなかったが、名前を呼ばれた気がした。
 
 
 
「早く取りに来ないと廊下に張るぞー」
「……さーせーん」
 
 

ガタン、と椅子を鳴らして立ち上がれば、担任――沖田太一は溜息をつきながら、返却を再開する。
俺はぼうっとしていて未だ覚めない脳みそに苛立ちながら、沖田から用紙を受け取った。
 
 
 
「全く、ぼーっとしてんなよ」
「いやぁ、寝不足で」
 
 
 
そんな風に軽く流して、席へ戻る。
開いた窓から零れる湿った風で用紙が揺れた。
 
 


Re: 泡沫に散る 
  未斗 <ID: krjRHpxW> - 2010/07/24(Sat) 22:58 No.26768


inu_ns.gif


雨は好きじゃない。
自分がすごく惨めに思えるからだ。
大きな窓に一筋の線を描く水滴は可憐で、
そして打ちつけられて果てる姿は麗しい。
孤独と絶望を纏う光景。
日常的な世界の中の、非日常的な彼ら。 

くぁ、と欠伸を漏らす。
それと同時に、沖田と目が合った。
 
 
 
「古瀬ー」
「…はい?」
「帰りに職員室来て。話ある」
「…へーい」
 
 
 
そう言って教室を出る沖田。
チャイムが鳴って、教室が騒がしくなる。
俺は大きく溜息をついて、机に突っ伏した。
 
 


Re: 泡沫に散る 
  火凛 <ID: lzU7ncnl> - 2010/07/25(Sun) 20:42 No.26770


tora_ns.gif覚えててくれたー☆

超久しいねぇ(>w☆)ノ

おぉ、流石っ、カッコィィ文章ー。

泡沫って言葉、僕最近好きなんだっ(どーでもいいかww

これからも暇な時来るから絡んでね☆


Re: 泡沫に散る 
  未斗 <ID: krjRHpxW> - 2010/07/26(Mon) 23:15 No.26772


inu_ns.gif

>火凛
 
ねー、かなり久々\(^^)/
いや〜全然かっこよくないよ〜
しょぼいしょぼい←
泡沫なんか素敵だよね(何
こっちこそよろしく!
 


Re: 泡沫に散る 
  未斗 <ID: krjRHpxW> - 2010/07/26(Mon) 23:25 No.26773


inu_ns.gif 
 
*吐き出した息を
 酸素に戻す方法を教えて
 
___
 
 
「ふーるーせーっ」
 
 
稀に。
そう、極々稀に。
俺に話しかけてくる奴がいる。
  
 
「ねー、古瀬?聞いてんのー?」
 
 
夏梅准。
同じクラスで、俺の隣の席に座ってる。
明るい性格、の様で友達は多い方。
長い黒髪が彼女の一番の特徴だ。
彼女を一言で表すと云うのなら、大和撫子。
それほどまでに綺麗な髪に、艶は絶えない。
 
 
「なーに」
 
 
視線は黒板のまま。
口だけで答えた。
 
 
 


Re: 泡沫に散る 
  未斗 <ID: krjRHpxW> - 2010/07/27(Tue) 22:21 No.26774


inu_ns.gif 
 
 
実際問題、夏梅と俺は其処まで仲がいい訳じゃあない。
隻が隣なだけであって、必要最低限度の会話しか、俺はしてないつもり。
夏梅だって特別俺とばかり話す訳ではなく。
普通のクラスメイトの、普通の関係。
 
 
 
「テスト、どうだった?」
 
 
 
の筈が。
たまに、たまーに、夏梅は来る。
高校生のくせに小学生みたいな笑顔で俺を見て来る。
 
 

「あー……。ふつーだったよ」
「うっそだー。何点?何点?また学年トップ?」
 
 
 
夏梅は、たまに鬱陶しい。
そして面倒くさかったりする。
 
俺の回答用紙を奪おうと手を伸ばしてくる夏梅に、溜息をつく。
この体から排出される二酸化炭素。
今この瞬間も、俺のせいで地球温暖化は進んでしまう。
それを止めようともがいたところで、息をしないで生きてくなんてできない俺。
ほんとーに、ちっぽけでくだらない。
 
俺。
 
 


Re: 泡沫に散る 
  未斗 <ID: krjRHpxW> - 2010/08/05(Thu) 23:13 No.26775


inu_ns.gif


「―――――せ。…古瀬、古瀬っ!!」
「わっ」
 
 
 
夏梅の声で現実に引き戻されれば、少し怪訝そうに眉を顰める顔。
考え事を始めると周りが見えなくなる、俺の悪い癖、らしい。
 
 
 
「古瀬さぁ、ちゃんと今聞いてた?」
「あー…わり。何だっけ」
「…はぁ。もういいよーだ」
 
 
 
そう言って頬を膨らませながら、自分の机に突っ伏した。
身体を丸めながら、ぶつぶつと何か呟いている。
 
……俺には、夏梅がよくわからない。
 
 



Re: 泡沫に散る 
  未斗 <ID: krjRHpxW> - 2010/09/04(Sat) 21:44 No.26787


inu_ns.gif
*何処まで行っても
 結局僕等は人形のようで

___


 
「失礼しまーす」
 
 
 
職員室の扉を開ける。
ガラガラ、タイヤが回る音。
机に向かう教師たちの視線が、一斉にこっちに向いた。
…だから、職員室は嫌いだ。
 

 
「おう、古瀬」
「…話って何ですか」
 
 
 
沖田に呼ばれ、歩きながらも要件を確認する。
どうでもいいから、早く此処を出たかった。
そんな俺の態度にはは、と笑う。

 
 
「話っていうのはな、進路の事なんだが…」
「大学には行きません」
 
 
 
一流大学のパンフレットを握り締める沖田の言葉を遮った。
沖田はいつもの事、と言うように苦笑いをする。

定期考査が終わる度、いつもいつもこの話。
勉強は嫌いじゃない。
学校が嫌なだけで。
中学の頃から成績は上の方だったし、高校に入ってからもトップを取る事が多かった。



「お前なら、どの大学だって行けるぞ?」



そこまで頭が上の方と言う訳でもない俺の高校。
特に理由も無く此処を選んだ。
中学の担任はもっと上の高校を薦めたが、笑って流した。
何かに惹かれた訳でもなく、何となく。
元々進学する気も無かったし、就職できればそれでよかったんだ。
 
 

「…興味ありませんから」
 
 
 
俺がそう言うと、沖田は深いため息をついて頭を掻いた。
面倒な生徒ですみませんね。
そう悪態を吐きたいところだが、何とか喉元で堪える。
沖田は椅子から立ち上がり、俺の手にパンフレットを握らせた。
 
 
 
「まあ、目だけでも通しておいてくれよ」
「…失礼しました」
 
 
 
一礼して、職員室を出る。

右手の中にある紙切れを、思いっきり握りしめた。
くしゃ、と言う音が聞こえて、紙切れが折れた。
 
 


Re: 泡沫に散る 
  未斗 <ID: krjRHpxW> - 2010/09/05(Sun) 16:13 No.26789


inu_ns.gif 
 
 
「あれ、古瀬じゃん」
 
 
パンフレットを丁寧に四回折って、ごみ箱に捨てた。
と同時に後ろから聞こえた俺の名前。
無視してそのまま帰る事も出来たが、流石に咋すぎる。
そう思って振り返った。
 
 
「おー、やっぱ古瀬だ。こんなとこで何してんの?」
「なんだ、渡井か」
 
 
渡井太輔。
一年からずっと同じクラスで、今は俺の後ろの席。
委員会や班活動でも何かと一緒に成る事が多い、所謂腐れ縁。
太輔の真っ黒い髪は短く揃えられて、優しい印象を感じさせる大きな目。
身長は俺より5センチくらい小さく、それが最近の悩みらしい。
そんな容姿を持った太輔。
部活は確か、野球部だったような。
 
 
「沖田に呼ばれただけだよ。別に好きで来た訳じゃない」
「あー、いつもの奴ね。大変だよな、お前も」
 
 
渡井は高校で初めてできた友達と言っても過言ではない。
ていうか実際そうだし。
まあ元々俺は友達を作る気は無かった訳だが。

入学初日、帰り際にクラスのみんなが携帯番号を交換している中一人帰ろうとした俺に、声をかけてきた。
すごいでかい声で。
あん時は、結構ビビったな。
 
 


【変わり駅】 プロローグ? 
  些樺 <ID: eHA4qyIs> - 2012/05/03(Thu) 10:27 No.27004
imoc_ns.gif
とある日本の駅の話。
そこの町には駅があります。
小さな、小さな駅でした。
ですが、それも、数年すれば新しくなり、
綺麗な、まるで都会にあるような、そんな駅になりました。

だけどまた数年もすれば
きっと新しくなって、
いつかはつぶれて。そんな何十年のうちに何十回も新しく
古く、を繰り返した駅がありました。
駅の名前はいくつも変わって、やがて
人々はその駅の名前を覚えることすらしなくなりました。
だってどうせ町に一つしかないのだからーと。
だけれど
そんな活発な駅の他にも、その町には駅ができました。
その駅は名前は変わらないし、姿も変わらず
ただ仕事をこなします。
人々はいつしか、
その駅がこの町にある、唯一の駅なのだと。
勘違いを始めました。
そして、勘違いから、数年後。
変わった駅はまだ、変わり続けています。
その町の人たちはあまり、その駅を使わなくなりました。
その駅はそもそも遠いところにしかいけず、
利用する人は最初はから少なかったのです。
それでも
その町に駅は一つ。
あの駅だけこの遠いところに通じる駅は、
必要ないと、しばらくは多くの人たちからは使用されません。
でも
旅行や、引っ越し、はたまた遠征。
そんなことでしか使われない駅
もちろん。
あの駅にも、遠いところに行くものもあります。
でも、人々がその駅を利用する理由がありました。
それは
   −【鏡】
一柱に、四面、隙間なく、はめられています。
その柱、つまりは、その駅の柱には全てに、
鏡があります。まぁ、あるのは駅のホームだけ。
あくまで、電車、新幹線が出るところだけ。
そんな駅の駅長さんは、まだ若い、女の子です。
少女といってもいい、そんな彼女の発想から、
この駅は、人々に、また利用してもらえるようになりました。
ただ、鏡を置いただけなのに。
それだけ、
もともとほっとかれていたこの駅には、
通常の駅にはあるハズの規則も大して聞かず、
駅長の気の向くまま、風のまま。ひたすら、ひたむきに。
それだけ。
いつしか人々はそんな駅に呼び名をつけます。
駅名がコロコロ変わるから、
駅長が変わっている少女だから、
変わった方針の駅だから、  その駅は

【変わり駅】

と呼ばれます。


第1駅 少女の育つ町の名と少女の名 
  些樺 <ID: eHA4qyIs> - 2012/05/13(Sun) 15:44 No.27017


imo_nins.gif
変わり駅。
その町の名前。
それを決めるのにも手間をかけました。
町長さん達が頑張って、
今の名前になったのはほんの5年前。
その会議、討議には【変わり駅】の[駅長]もまだ中学生ながら
その会議に参加しておりました。
ですが、あくまでも此の時はまだ、
彼女は[駅長]ではありませんでした。
それでも、彼女はその会議に参加し続けました。
彼女が会議に来ることは、
大人達はもちろん反対をしました。
それでも、彼女は。
会議室の扉を壊したり、
鍵を持ち出したり、
窓を割ったり、
盗聴器をしかけたり、
職員をワイロしてみたり、
あの手この手で会議に参加します。
彼女はただ、話を聞いているだけではなく、
立派に意見を出しました。
勿論、意見は聞いてはもらえませんでした。
そして、いつしか彼女は会議に入るのをやめ、
気付けば、彼女は[駅長]になっていました。
誰も、乗らない、使わない駅なので
大人も『そのうち飽きるだろう』と放っておきました。
そうして、
彼女は[駅長]になり、少し月日もたち、
町の名前が決まった時、町の大人たちは
一応と、彼女に町の名前を伝えました。
でも、彼女は、駅の名前に
町の名前は一切使わず、【変わり駅】と名付けました。
その町の名前は
【穂空町】といいます。
一目みて何と読むのかわからない人も少なくない
名前でした。
これを聞いて少女は少しがっかりしたそうです。
その名前は昔、彼女が冗談で言った名でした。
それを大人たちは我がもの顔で、名づけました。
少女にとっては皮肉でした。
大人たちは彼女のおかげでその町が
有名になったのをいいことに、名づけたのです。
【穂空町】
《ほだかまち》。《ほだかちょう》。
そう呼ばれています。

少女、駅長は、まだ高校生です。
今彼女は16歳、もうすぐ17。
高校2年生です。
そして、少女の名前は

《倉枝 穂空》といいました。

「アタシは、ほだかちょうがいいとおもうっ!」
誰もが、そんな中学生の少女の案に
苦笑いをしたのに、
今、その町は【穂空町】は、
その名を、地図上にかかげているのです。


Re: 【変わり駅】 第2駅 穂空という... 
  些樺 <ID: eHA4qyIs> - 2012/05/15(Tue) 19:28 No.27026


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「アタシなんで穂空町なんて名前にしたんだろう。」
少女は、穂空はときどき思う。
いや、なんでも何もただ単に、
自分の名前を入れたかっただけなのだが・・。
何故かわわからないが、彼女にとって
それは疑問だったらしい。

穂空が通う学校、
「穂枝高校」
2年前、そんな名前になりました。
彼女は志望校を変えようかと思いました。
どこまでこの町はあざといのだと。
そんなに好感度が欲しいのかと。
あんなにバカにしたくせに、と。
それはまた今度の話だが。
とにかく少女は嫌だった。
その学校に通うのが。
校門をくぐるのが。
壇上にたつのが。
新入生の代表になるのが。
教師どもから媚を売られるのが。
生徒から、奇怪な目で見られるのが。
『名前が似ていないか』
『町の名前と同じだ。』
『どうして特別扱いなんだ。』
『なんで、代表だったんだろう。』
そんな目で見られ、
『彼女に恩を売っておこう。』
『偉い人の目にとまるかもしれない。』
『他の生徒をないがしらにしてでも。』
こんな視線を注がれ。
1年がたった。
今年、少女は奇怪な目にも
媚びた視線にも、慣れたころ。
校長と、町長、ついでには中学の恩師、
小学の嫌師、保育園の好師、塾の講師から
ありとあらゆる、
親戚いがいの(親戚も混じっていたかもしれないが)
自分にかかわった大人から頼まれた。

『名前を変えてくれないか。』と

親に相談した。
友の相談した。
祖父に話した。
祖母に話した。
兄妹に話した。
でも答えはみんな同じだった。
だから、
彼女は問うた。
『これは、アタシの名前だ。
 命をもらって、与えられた、大事な、名前だ。
 今や、地図帳にまで載ってる。そんな名前だ。
 高校の名前の由来にもなる自慢の。
 それをアタシに変えろというのですか?』
すすりなくような声で言った。
必死だった。
他にもいくつも何個もいくらでも
機転を利かせ、伝えた。
【これは自分の名前だと。】
だけど。
大人達は言った
『そうだ。』
少女は一瞬嬉しかった。
なのに、

『だけど、この町の名前だ。
 同じ名前ではお前も嫌だろう。』

少女の頭は真っ白になった。
それは、
その名は
その名前は、
『アタシの』《名前》からとったくせに。
一緒に聞いていた家族と友達は
泣いていた、泣いてくれた。
それでも、少女は必死に、頑なに、ひたすらに、
泣くのを必死でこらえ、
大人達を見下し言った。
《貸してやる》

『それはアタシの名前【だった】。
 だけど、この町に【貸す】いや【課す】。
 また5年後にはこの町の名前をまた変えてやる!
 そして今度は【返して】もらう!覚えとけ!』

笑顔が保てたのはその台詞までで、
その先の台詞は、
ほぼ泣き声と、大人達への暴言へと消えた。
少女の、本音と、本省とともに、消えてしまった。
ホントは、[絶対]渡すものかと思っていた。

そして、穂空、いやもう名前は違う少女、
元、穂空は決めていた。
5年後にはこの町、
【穂空町】を
《変わり町》へと変えさせる、返させる

そう、きめていた。


Re: 【変わり駅】 第3駅ー少女が学校... 
  些樺 <ID: eHA4qyIs> - 2012/05/19(Sat) 16:28 No.27027


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「・・・行ってきます。」
「いってら、しゃ。い。」

お母さんは、私が学校に行くことで泣いた。
これが初めてのことではないけれど。
今回は特にひどかった。
本当は、病院に居なくてはならない、どこか箱のような
場所に隠れていないと人と接触すれば、
吐き気が止まらず、体中が震えあがり、そんな症状が出てしまうらしいのだ。
この話を私は名前を失って2時間後に聞いたのだ。
当然原因は私の『名前』。
これは、私が『名』を無くした、貸した、
次の日の話だ。

本来、こういう特別な場合は学校を休んでも文句は
言われないし、欠席扱いもされない。
確かに、一見すれば私の名前を変えただけなのだが、
深見をすれば、町全体で少女によってたかって
「名前を捨てろ。」といいよるのだ。
普通なら、ちょっとしたひきこもりもあり得るらしい。
そして、代わりの、替わりの名前がつくまで
学校になど行くわけがなかった。
私もそうしたかった。
けれど、お母さんが言った。
「無理、しなくても・・いいのよ。」
そういってお母さんはまた嗚咽を漏らしつつ話す。
「無理なら、やす、んで、部屋でスゴして、ね?」
娘の私にすら嫌悪感を抱くほど、母の病はヤバいのだ。
だから、私は頷きそうになった。
『行きたくない』 と、
その一言で楽に慣れるのだから、
そこで思った。

ー何が無理なんだろう?

ーいじめを受けたわけではない、
ー友達が一人もいないわけではない、
ー親友に裏切られてもいない、
ー家族も普通だ、
ー病気にかかっていない、
ー親戚が死んだわけでもない、
なのに

[どうして私が学校を休まなきゃいけないんだ?]

何も、休む理由なんてない。
私が休んだところでクラスメイトや友達は
[どうしたんだろう?]ぐらいにしか思わない。
(いや、それも十分ありがたいが、)
それどこらか、教師、大人どもは
[可哀想に]とか、[しょうがない]とか
そんな意味もない同情をして、
私を哀れみ、ちょっとした、御歓談を楽しむのか?
そんなの

ーふざけるな。

私が学校に来たらどんな反応をするだろう?
[なんで?]
[こんな時なのに]
[子供だからことの大きさがわからないんだ。]
[可哀想にね、]
そんな
私を、
嫌悪の視線で、
哀れんだ視線で、
バカにしたような目で、
同情の視線で、
憎悪の視線で、
嫉妬の目なんかで、
私をみて、ただ不快になるんだろう。

そのほうがいい

そのほうがよかった、
私の『名前を奪った』そんなことなど忘れて、
または、ちょっと同情した後、
楽しく学校生活を送るよりずっといい。
だから、
そんな大人達にも忘れて、
自分には、味方がいるから、友達だってたくさんいるし、
相談に立ち会ってくれる先生もいるだろう。
名前なんて無くったって、自分は学校にいけるのだ。

ーそう思っていた。


Re: 【変わり駅】 第4駅ー少女の帰る... 
  些樺 <ID: eHA4qyIs> - 2012/05/19(Sat) 17:05 No.27028


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「おはよう」
そう言って教室へ入る。
いつものように、
そしていつものようにみんなが返してくれた。
「おはよう!」
みんな元気だなぁ、
こんな日なのに、元気だ、何事も無かったみたいだ。
(まぁ、[何か]があったのは、私だけなのだが。)
笑顔だ。明るい。爽やか。良い。
どうせなら、
家よりも、学校の方が楽しいかもしれない。
そう、−思っていた。
だけど。
《それは》出席確認の時だった。

「大内 楓。」
「はーい」
「河原 夜宵。」
「ん。」
「返事。」
「はい、はい。」
「樹中 利南。」
「いるいる!」
次は私かなぁと思ってた。
誰も、先生の顔なんか見ず、
なんかしながら、音楽聞いたり、ゲームしたり、
宿題したり、話したり、読書したり、
誰が返事しようと関係なく。
あぁ、楽だなぁ。
「楠原 瑠衣」
「あーい。」
あ、楠原さんがいたか。
順番もちょっと忘れがちだった。

「倉枝」

「−・・・。」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。・」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
私のクラスは32人、今日は3人休みだから、
私を抜いて28人のバラバラにの視線が、私に
【集められた】

「大内 楓」も
「河原 夜宵」も
「樹中 利南」も
「楠原 瑠衣」も
みんな、『名前』を呼ばれた。なのに

『倉枝』

私は、【出席】すらできないのか?
名前がない。
どうして私は、こんなおおごとを、平気だと思ったいたんだ、
こんな、名前が無いというのは、
《自分の存在が無いこと》
それと同様なのに、どうして・・・。

「どうした?倉枝?いないのか?」
出席簿から顔を上げずに先生は問う、
いない、
いないのと同じだ。
ほら、みんなが見てる、変に思う。返事しなくちゃ。
「え?」
「何何?どったの?」
「なんで名前まで言わないの?」
「先生忘れただけじゃね?」
「誰か言えよ。」
「そうよね。」
「じゃあ、学級委員の上梅さんで」
一人、少女が手を上げた。
学級委員の上梅さん。
「先生。ちゃんと倉枝さんの名前を言ってませんよ。
 忘れないでくださいよ。ね、穂空さん?」
「あ・・・。」
私は頷けなくて、どうしていいかわからなかった。
ーそうだ、みんなは知らないんだ。
今のうち言おうか。
でもそしたら、ココでも私はまた居場所が無くなる。
悩んでいると先生が喋りだした。
「あー、みんなには言ってなかったが倉枝はー、」
ドン、と机の上に手を打って、立ち上がる。
そして叫ぶような声で、言った。
「ごめんなさい。ちゃんといますよ。倉枝!ここに。
 ね!先生!」
みんなは笑った。
[なんだやっぱりただの間違いなのだと]
先生は苦笑いしたあと、唇を噛んでいた。
そして、
「すまん、すまん。【今度】じから気をつけるな。
 だから、『早くしろ』よ?倉枝。」
「あ、はい。すみません。座ります。」
ホントは、先生の『早くしろ。』は
『早く名前をつけてもらえ』ということだろう。
助かった。そう思った。その時。

校長と理事長、後に教頭が、教室に来た。

「なっー!」
なんで。
どうしてだ。
まさか。
嘘だ。
そんな言葉ばかり頭に浮かび。
私は、理事長を睨む。
私の『名前』を作った張本人。
私の視線に気付き、彼の目はこう言っていた。

「これで、本当にキミは名を失う」と

私の最後の砦が、
学校を、
こいつらは、壊そうと?
そんな、
ー聞かれたくない。
特に
【あいつら】には。
そこで気付く。

【あいつら】は?

私の親友、3人は?
いない?ここに?
今日は?休み?
昨日も、友達の中に入っていなかった。
あのことをしらないハズだ。
なのにどうして≪3人揃って≫いない?
まさか、
まさかまさか、。

「みなさんに、伝えたいことがあります。」
「・・・。理事長。まだ出席確認中ですが。」
「キミは黙っていなさい。」
担任の先生が、止めようとしてくれた。
だけど私には、そんなこと
ー【もう。どうでもよかった。】

あいつらに聞かれていなければ、それでいい。
だから、
理事長を見たまま、視線をそらさず、言う。
「どうぞ。
 ところで先生。私は、早退しますね。
 『名前』の確認の仕様がない生徒は欠席しますね。」
「・・・。わかった。」
先生はまた唇を噛んでいる、きっと悔しんでくれている。
彼は、本当にいい先生だ。こいつらと違って。
みんなは『名前』のくだりはさっきの
続きだと思ってくれたようだ。
いいんだ。
これで。
私は。

3つの空席を見て笑顔になる。
空席を4つにするため、
私は帰る、本当に、最後の砦へと。
そうだ。

私【達】の駅へと。


Re: 【変わり駅】 余談駅 
  些樺 <ID: eHA4qyIs> - 2012/06/03(Sun) 09:16 No.27029


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家、というか駅に帰れば、
3人はそこにいた。
私の名前はホントはもう決まってる
「倉枝 香葵」
お母さんのセンスはちょっとおかしいと思う。
「おかえり。」
「初めからいたかのように!?」
「うん。」

3人の名前は
《莉梨》
《紗柄》
《輝那》
みんな二文字で、私だけ三文字だったのが
気に食わなかったけど・・。
今はそろった。
名前が変わって嬉しいのはそれぐらい。

そして。
どこか、町のはしっこの学校が、
《花葵高等学校》
になったらしい。
私はそれを聞いても、もう泣かなかった。

NO: PASS:

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